面倒な!と言うように猿臂(えんぴ)を伸ばして、エンピッピッピー
「面倒な!」
と言うように猿臂(えんぴ)を伸ばして、京弥の背に手を廻そうとしたのを、体を沈めて素早く腰車にかけると、もんどり打たして笑止なる化け大名をとって投げました。
しかし、十吉とてもなかなかにさるもの、投げ出されたかと見るまに、くるり一つ廻って立ち直ると、おそろしく言葉の汚ない大名もあればあるもので、憤りながら叫びました。
「太てえ奴だッ。この女、男だぞ。俺のお株を奪やがって、何か仔細あるに違げえねえ。そらッ、野郎共、のしちまえッ」
正体を見破られたと知ったので、権之兵衛が叫びながら駈け出しました。
「百化け十吉! もう逃がさぬぞッ」
ばたばたと走りよったものでしたから、ぎょッとなったのは言わずと知れた十吉でした。
「そうかッ。木ッ葉役人の化け手先だったかッ。うぬらに捕まる百化けのお兄さんかい。へえい、さようなら。おとといおいでよ――」